「89坪の土地に区分登記できる2世帯住宅を設計してほしい」という施主の明確な要望があった。今までにも何度か2世帯住宅を設計したことがあったが、2世帯完全分離型の住宅の設計は、はじめての経験である。大家族から核家族へ急速に移行していった時代の流れからして、2世帯分離型住宅は自然な流れである。
では、2世帯の関係をどのように構築すればいいのか。各々の世帯のプライバシーを保ちながらお互いの気配を感じ取れる程度の距離感を作り上げることが大切であると判断した。そのため共有の中庭を設け、開口の位置が重ならないようにした。世帯間の適正な距離感はそれぞれの家で違うが、親子仲良くを大前提とした2世帯融合住宅は、世帯間の摩擦が生じやすく、家族関係においてある特殊な時期に成立する形態であると思われ、建築のストックとなりえるかという疑問もあった。2世帯分離型住宅でどのような世帯間の関係が構築されていくのか、とても楽しみである。